摩耗伸びを抑えるための給油では、ピン~ブシュ間に油膜が形成されていることが重要です。
給油が不十分だと、運転時間の経過とともに、少しずつ油切れを起こしたリンクが増えます。
油が切れたまま使用をつづけると、ピン~ブシュ摺動面がざらついてしまいます(凝着摩耗)。
このような状態になると、その後給油したとしても、油膜形成が難しくなり、健全なピン~ブシュよりも摩耗伸びが進行しやすくなります。
また、摩耗粉がピン~ブシュ間に詰まり、時としてピン~ブシュ間の硬直(キンク)に至らしめることもあります。
写真では、チェーン表面に油膜が有るため、給油されていることがわかります。
しかし、赤枠の部分は他のリンクと違い、表面が極度に赤茶色になっています。
この部分では以前に油切れがあったと推測できます。ピン~ブシュ間の摩耗粉が錆び、油と混じって排出されている状態です。
内部ではピンブシュの摺動面がザラついている可能性が高いです。
油切れしたままで稼働していると、チェーンからのきしみ音の発生や、異常な発熱も兆候として表れる場合もあります。
また、油切れしたままで長時間稼働した場合に、多量の摩耗粉がピン~ブシュ間や内プレート~外プレート間に残留していると、そのまま給油してもピン~ブシュ間への潤滑が不十分となりますので、給油前にこれらを取り除くことも重要です。
油切れが発生して局部伸びしたチェーンは、基本的には全リンク交換をお勧めします。
事情によりしばらく継続使用する場合でも、まずは摩耗粉等を洗浄して取り除き、次に十分な給油を行ってください。
油切れが発生が認められた場合、発生部については以下をよく観察および調査を行う必要があります。
- 局部伸び量(油切れが発生した部分数リンクの伸び量)を測定し、使用限界に達していないか?
- 摩耗粉の詰まり等により、リンクの屈曲が固くなったり、硬直していないか?(詰まっている場合は、見かけ上、局部伸び量が短くなる場合がありますので、その場合は、詰まりを油等で洗い流した後に、再度、伸び量を測定してください。)
- ピンが外プレートに対して回転していないか?(硬直したリンクがスプロケット部で無理に屈曲すると、ピン回転が生じる場合があります。)
- ブシュが割れていないか?(外観ではわかりづらいのですが、ローラを手で回してみて感触でわかる場合があります。)
その後は、油切れ発生部の経過を注視しつつ、チェーン全体をこまめに点検実施くださるようお願いします。総合カタログの「1 伝動用チェーン/取付・調整・メンテナンス」の項も合わせてご参照ください。